TQM品質管理入門

【★★★★☆4つ星 役に立つ】

TQM品質管理入門を読んだきっかけ

会社員としての仕事で品質管理について全体像とQC7つ道具がどんなものか知っておく必要があったため。

自分の本来の仕事には直接的には関係ありません。

TQM品質管理入門に何が書いてあったか

TQMの目的、必要性、歴史的変遷、PDCAや「プロセスで作りこむ」、「データで語る」といった基本的考え方、5S、標準化、改善、QCサークル、方針管理、日常管理、トップ診断等々、品質管理入門の書名にふさわしく、簡潔にやさしく書かれています。

実際に品質管理をこの本だけで始めるというわけにはいかず、経験者やコンサルタントが入ってトップマネジメントがしっかり関与して進めるものだとおもいますが、私のように全体像を知る目的ではすばらしい本でした。

TQM (Total Quality Management : 総合的品質管理)とは、トップのリーダーシップのもとに組織が一丸となって、顧客が高度に満足する製品を生産したり、サービスを提供したりするための一連の活動です。

製造業であれば生産している製品の品質、サービス業であれば提供しているサービスの質をよくする必要があります。そのためにTQMは製造業、サービス業などすべての業種において、また小さな組織から大きな組織まで、組織の規模にもよらず有効な活動です。

 

当たり前品質と魅力的品質の概念は覚えておきたい。

 昨今では、物理的な充足状態と満足度の関係を、より二元的にとらえる必要が出てきています。この二元的な認識方法として、狩野紀昭博士が提唱した「当たり前品質・魅力的品質」がよく知られています。

たとえば、車が走るからといって積極的な満足は感じませんが、走らないとすると不満になります。これはこの図の中で、当たり前品質として説明されます。また、高精度ナビゲーションシステムがついていないからといって不満は感じないものの、ついていれば積極的に満足と感じる人も多くいます。このようなタイプは、魅力的品質として説明されます。

当たり前品質とは、「車が走る」の例のように製品・サービスの基本機能であり存在理由にかかわるものです。したがって、製品・サービスを提供している組織は、まず当たり前品質をしっかり確保したうえで、魅力的な品質・質を付加することが課題です。

 

プロセスと結果の関係については覚えておきたい。この学生と成績のたとえは秀逸で、そのまま人に説明できるように覚えたい。

プロセスが維持できている状態と、結果が好ましい状態とは異なるので、これらの両方を考慮する必要があります。

プロセスと結果の二元的な関係は表1-1(i)に示す通り、先の4つになります。

(a) プロセスは安定していて、規格から外れた製品やサービスを出していない

(b)プロセスは安定しておらず、規格から外れた製品やサービスを出していない。

(c)プロセスは安定していて、規格から外れた製品やサービスを出している

(d)プロセスは安定しておらず、規格から外れた製品やサービスを出している。

それぞれの対処の仕方をまとめたものが表1-1(ii)です。この内容は学生の試験結果とそれに向けた努力プロセスになぞらえるとよくわかります。

 

表1-1 プロセスの状態と結果の状態

(i) 2 × 2 = 4つの状態

    プロセス
    安定している 安定していない
結果
よい (a)今よく将来もよい (b)今後悪くなる可能性あり
悪い (c)安定して悪い状態(慢性不具合) (d)プロセスも結果も悪い

 

(ii)今後の攻め方

    プロセス
    安定している 安定していない
結果
よい (a)今の努力を続ける (b)プロセスを安定化させ(a)を目指す
悪い (c)今までと違う着眼点が必要 (d)まずはプロセスを安定させる

 

(a)は、通常の講義に積極的に参加し、予習や復習などの努力を安定して続けていて、また試験結果もよい場合です。すなわち学習プロセスをよい状態で安定させていて、また結果も好ましいレベルにあるというものです。この学生は今後の試験でもよい結果を出すことが期待できます。製品であれば、今のようにプロセスを安定させ続けることで、今後も規格から外れた製品が出ないことが期待できます。

次に(b)は、普段から講義に出席せず、復習などは不まじめでプロセスは悪いのですが、結果として試験に通っている場合です。この場合には、今回の試験にはパスしたかもしれませんが、今後は試験にパスしないかもしれません。製品の例ですと、今はたまたま規格を外れた製品が出ていないのであって、今後も規格外れが出ない保証はどこにもありません。標準化を徹底し、プロセスが安定するように努力する必要があります。

また(c)は、講義に出席して演習や復習もまじめにやっているにもかかわらず、結果として試験をパスしていない場合です。これは、教員の指示に従いプロセスをよい状態で安定させているのですから、学生の問題というよりも講義内容、演習の指示など教員側の対応に問題があるといえましょう。製品の例ですと、作業者は作業標準どおりに安定して作業をしているにもかかわらず規格外れが出ている場合です。この場合には、作業者の作業に問題があるのではなく、それを管理する側に問題があります。したがって、管理方法を見直さなければなりmせん。

最後の(d)は、学生は時間内の演習や復習などをやらないというようにプロセスが悪い状態にあり、結果的に試験をパスしなかった場合です。この場合には、プロセスをよい状態に安定させることが第一の課題です。製品・サービスの場合には、このような状態はプロセスの立ち上げ段階でよく現れます。まずはプロセスを安定させるべく、標準類を設定しそれに従うように作業者を教育するなどが必要になります。

 

 TQMの歴史的変遷についての理解も、日本の産業がどう発展し、いまどういう状態にあるのかと密接に関係があることで、ぜひ理解し、人に説明できるレベルにしておきたい。

日本の戦後からの経済発展に、TQMは大きな貢献をしました。誰もが知っているように、日本には輸出により利益を得て発展を遂げるための天然資源がありません。したがって、戦後の経済復興・発展において工業化以外に生き残る道はありませんでした。このためには、政治面で安定し安全が確保される状態にするのが第一優先です。次に、輸送手段となる港湾や道路の整備、生産の動力源である電気や水道の整備など、インフラストラクチャの整備があげられます。

インフラストラクチャの整備ができても、市場で製品やサービスが受け入れられて工業化が進められるとは限りません。「何か」が必要なのです。たとえば製品を輸出するとしても、他社製品にはない「何か」が必要なのです。その「何か」に対して、日本企業の多くは「品質の良い製品」「質の良いサービス」を提供することを選びました。

本節では、日本の経済的な発展段階と対応づけて、品質管理の歴史的な変遷を紹介します。

第1期 : 1960年ごろまで

1960年ごろまでは、工業国になるまでのインフラストラクチャの確保が最優先課題でした。1950年代の初期までは、メイド・イン・ジャパンは安かろう・悪かろうという粗悪品の代名詞であり、これを払拭するために品質管理の導入は多くの企業にとって課題でした。略

第2期:1975年ごろまで

1960年代からは、工業鵜国としてのインフラストラクチャが整い始めました。一方、一人当たりGDPが3000USドル程度であり、欧米の先進国に比べるとまだまだ貧しかった時代です。貧しさは、同時に輸出のコスト競争力を意味しています。第1期の安かろう・悪かろう時代から脱却し、第2期では標準的な品質・質を実現し、このコスト競争力を武器として活動を進めた時代です。略

第3期:1990年ごろまで

1980年代は、日本が急激な成長を遂げ、そして、バブル経済の崩壊の入り口まで来た時代です。この時代には、一人当たりGDPが10000USドルから30000USドルに増加するなど、日本は世界的に見て豊かな国の一つになりました。これは、第二期まで日本が有していたコスト競争力を失ったという意味です。そうすると、何か他の競争力を得なければなりません。日本企業の多くは、「よりよい品質・質を実現する」を戦略として選びました。端的にいえば、標準的な価格でありながら、品質・質のよい製品・サービスを提供することを目指したのです。

ではこれをどのように実現したのでしょうか?キーワードは総合的(total)です。すなわち、欧米の先進国企業では部門ごとのセクショナリズムが強く、「品質・質は品質・質部門の仕事」「品質・質は検査部門が責任を持つ」という風潮が多かったのに対し、日本企業は、品質・質を総合的にとらえ、組織全体でこれをよくするべく活動しました。略

第4期:21世紀を迎えて

バブル経済の崩壊とともに、日本企業のお家芸だった「組織全体で総合的に品質・質をつくりこむ」ことが、諸外国企業でも実践されるようになりました。それらは、日本企業のやり方を下敷きに、その国の文化に応じて体系を整備したものがほとんどです。例えば1990年代後半からは、米国ではシックスシグマという活動が大ブームでした。このやり方は、日本でのTQMをベースに、米国の文化に合わせてその方法をチューニングしたものです。

 

QC7つ道具、5S、カイゼンPDCA、標準化についても概要が説明してあります。

 

TQM品質管理入門から何を学んだか、どう活かすか

最初に書いたように、私の仕事に直接は関係の無い話で、必要に駆られて学んだことですが、TQMは応用範囲が広く、本の中で触れられている製造業とサービス業だけでなく、私のようなホワイトカラーの業務にもぜひ適用してみたいと思うことが多々ありました。